僕は自分のスマホで送られてきた写真を見た。
 アプリか何かでフィルターをかけてあるのか、色合いが実際よりも鮮やかな気がする。


「部屋にこんなツーショットが置いてあれば、未来のカノジョたちを漏れなくモヤモヤさせられるでしょ? 『彼氏がこんな大事そうに飾ってる写真の女はいったい誰なんだー?』って」

「それはいったい誰の得になるんだ」

「あは。まあもちろん、一番の理想は……佑馬の部屋に入る彼女イコール私で、この写真は『あ、これ佑馬がやっと告白してくれた日に撮った写真だね』って懐かしむためだけのものになることだけど」

「……なるほど。そう言われると飾っておくのも悪くない気がしてきた」


 将来一人暮らしを始めて自分だけの部屋を得たら、そのときは立派な写真立てにいれて飾っておこう。もう一度画像を見つめながらそんなことを思う。


「そういえばさ」


 まだ満足そうに写真を眺めていた莉桜が、ふと僕に目を向けた。


「私、『これからもずっと生きていたい』って言っちゃって、ゲームに負けちゃったわけだけど……負けた方は勝った方のお願いを何でも一つ聞くって約束だったよね」

「ああ」

「私に何をお願いするか、もう決まった?」


 ……そりゃあ当然決まっている。元々莉桜にしてもらいたいことなんて、一つしかないのだから。

 僕が小さくうなずくと、莉桜は穏やかな笑顔の中に少し緊張をにじませた。


「何かな。できれば今すぐ叶えられるような、簡単なものにしてもらえると嬉しいけど」

「ごめん。今すぐは叶えられないし、きっと簡単でもないけど──」


 僕は勇気を振り絞って、叶えて欲しい願いを口にした。
 引かれたり嫌がられたらどうしようかと思ったが、莉桜はちょっと驚いたように目を見開いて、すぐに「なんだ、そんな簡単なことで良いんだ」と言って笑ったのだった。