「だから少しでも手術の時期を遅らせるために運動制限なんかが掛けられてるんだろ。莉桜ちゃん体育の授業は参加してないんじゃないか?」
「してない。小学生のときからずっと」
僕はゆっくり息を吐いた。
皆が送る当たり前を制限され続け、それでも4回目の手術。
心臓という生命活動をする上で必須の臓器に常に不安を抱え、一部を人工物に置き換えることでどうにか生きながらえている。
自分はそんな無理をしてでも今後も生き続ける必要があるのか、いっそ手術が失敗したら解放されるのではないか。これまでの人生で、莉桜の頭にそんな考えが何度も浮かんだであろうことは、容易に想像できる。
これからも生きていたいと思ってほしい。希望を捨てないでほしい。諦めの言葉なんて聞きたくない。
そう願うことは、もしかしたら僕のエゴなのだろうか。