意味のない人生だった。
見慣れた白い天井を眺めて、私はふと思う。
私は何のために生きてきたのか。わからない。十数年余りの人生経験をもとにあえて語るならば、死ぬためだろうか。
「はっ……はぁ……」
もう体にはほとんど力が入らない。手を持ち上げるだけでも一苦労で、もはや自力で起き上がることは叶わない。まるで体だけおばあちゃんになったみたいだ。
「うっ、くっ……」
胸のあたりが苦しい。
息がしにくい。
私が、何をしたというのか。
一番よく見た光景といえば、病院の周囲に咲く花々。
一番よく聞いた音といえば、ベッドサイドモニタの音。
一番よく触った物といえば、冷たい真っ白なシーツ。
一番よく嗅いだ匂いといえば消毒液の匂いで、一番よく味わったのは苦い薬の味だ。
私が、いったい何をしたというんだ。
「くっ、うぅ……」
視界がにじむ。何かが零れた。熱くて、拭いたいけれど、手に力が入らない。
できる限りのことはした。
提案されたよくわからない治療にも耐えた。
吐き気にも、痛みにも、寒気にも、息苦しさにも耐えた。
不安にも、悲しみにも、寂しさにも、苦しみにも、自己嫌悪にも、無力感にも、周囲への罪悪感にも、幸せそうな人たちへの嫉妬にも、憧れにも、憎らしさにも、後悔にも、絶望にも、恐怖にも、頑張って耐えて、耐えて、耐えた。
けれど、私はもうすぐ人生を終える。
いったいどうして、私は生きているのだろう。
いったいどうして、私は生きてきたのだろう。
いったいどうして、私は生まれてきたのだろう。
いったいどうして、いったいどうして、いったいどうして……――。
「来世が、あるなら……幸せに、なりたい、なぁ……――」
不安をあおる大きな音が鳴り響き、慌ただしい足音や声が聞こえる中、視界は暗転した。