「ゆうちゃん! おおきくなったら、わたしとケッコンしてくれる?」
「ケッコンってなに?」
「んー、ずっといっしょにいるってこと!」
「そうなのか! おれ、あずさとケッコンする! やくそくのゆびきりげんまんしよっ!」
「うん!」
"ピピッピピッピピッ"
頭上から鳴り止まないアラーム音。せっかく懐かしく、楽しい夢を見ていたのに起きたくもない現実へと引き戻されてしまった。
もう少し夢の中で幸せだった頃のことを思い返していたかった。
何度も夢で見てきた幼少期の結婚を約束した瞬間。
初めてのプロポーズされた場所は、近所の公園の砂場だった。
小さな手を泥だらけに汚し結ばれた小指。
一生忘れることのできない、私の大切な思い出の一つ。
「はぁ、学校に行きたくない」
カーテンの隙間から部屋へと溢れる光が鬱陶しい。
起きないといけないのは頭ではわかっているつもり。でも、体は正直だ。
ピクリとも動いてくれる気配すらない。
"ピピッピピッピピッ"
スヌーズ機能のせいで、耳障りな不快が募る音が私の鼓膜を振動させる。
体を動かして止めないと永遠となり続ける不快音。
少し前までは、大好きな曲をアラーム音として設定していたが、毎日目覚めの音として聴いていたせいか、いつからか好きだったはずの曲は大っ嫌いな曲へと変貌していた。
よくリピート再生して歌詞を覚えてしまうほどハマっていた曲だったのに。
携帯の画面に表示された『停止する』の文字。うっすらと細く開いた目から携帯に手を伸ばし、停止の文字をタップする。
「やっと静かになった・・・てことでもう1度夢の世界へ・・・」
「こら! いい加減起きてきなさい!」
現実味の溢れた声が一枚の薄い扉の先から聞こえてくる。
一度にかき氷を口に含んでキンキンに頭が痛くなるのと同じくらい、甲高い母の声が私の脳をズキズキと刺激する。
大変不愉快極まりない。
毎朝繰り返される娘と母の攻防。
「今いくよ〜」
「早くしないよ悠くんが迎えにくるわよ」
「う、うん。わかってるよ」
適当に返事をして、母の言葉を右から左へと流す。
幼馴染の吉川悠とは、1週間前までは毎朝一緒に学校に登校していた。
幼稚園に通っていた頃から1日も欠かさず、私たちは常に一緒だった。
それも1週間前のあの日。突然、彼の方から終わりを告げられた。
「彼女ができた」と彼が嬉しそうに話す顔を私は、どんな表情をして聞いていたのか思い出せない。
きっと祝う人の顔ではなかったと思う。
私にとって、その言葉は絶望そのものだったから。
「ケッコンってなに?」
「んー、ずっといっしょにいるってこと!」
「そうなのか! おれ、あずさとケッコンする! やくそくのゆびきりげんまんしよっ!」
「うん!」
"ピピッピピッピピッ"
頭上から鳴り止まないアラーム音。せっかく懐かしく、楽しい夢を見ていたのに起きたくもない現実へと引き戻されてしまった。
もう少し夢の中で幸せだった頃のことを思い返していたかった。
何度も夢で見てきた幼少期の結婚を約束した瞬間。
初めてのプロポーズされた場所は、近所の公園の砂場だった。
小さな手を泥だらけに汚し結ばれた小指。
一生忘れることのできない、私の大切な思い出の一つ。
「はぁ、学校に行きたくない」
カーテンの隙間から部屋へと溢れる光が鬱陶しい。
起きないといけないのは頭ではわかっているつもり。でも、体は正直だ。
ピクリとも動いてくれる気配すらない。
"ピピッピピッピピッ"
スヌーズ機能のせいで、耳障りな不快が募る音が私の鼓膜を振動させる。
体を動かして止めないと永遠となり続ける不快音。
少し前までは、大好きな曲をアラーム音として設定していたが、毎日目覚めの音として聴いていたせいか、いつからか好きだったはずの曲は大っ嫌いな曲へと変貌していた。
よくリピート再生して歌詞を覚えてしまうほどハマっていた曲だったのに。
携帯の画面に表示された『停止する』の文字。うっすらと細く開いた目から携帯に手を伸ばし、停止の文字をタップする。
「やっと静かになった・・・てことでもう1度夢の世界へ・・・」
「こら! いい加減起きてきなさい!」
現実味の溢れた声が一枚の薄い扉の先から聞こえてくる。
一度にかき氷を口に含んでキンキンに頭が痛くなるのと同じくらい、甲高い母の声が私の脳をズキズキと刺激する。
大変不愉快極まりない。
毎朝繰り返される娘と母の攻防。
「今いくよ〜」
「早くしないよ悠くんが迎えにくるわよ」
「う、うん。わかってるよ」
適当に返事をして、母の言葉を右から左へと流す。
幼馴染の吉川悠とは、1週間前までは毎朝一緒に学校に登校していた。
幼稚園に通っていた頃から1日も欠かさず、私たちは常に一緒だった。
それも1週間前のあの日。突然、彼の方から終わりを告げられた。
「彼女ができた」と彼が嬉しそうに話す顔を私は、どんな表情をして聞いていたのか思い出せない。
きっと祝う人の顔ではなかったと思う。
私にとって、その言葉は絶望そのものだったから。