「それでつきあってほしいことってこれか?」

 目の前に置かれた巨大なパフェを前に、僕はため息を漏らす事しか出来なかった。

「そだよ。これカップル限定のパーフェクトいちごパフェ。一回たべて見たかったんだ」

 こはるはこれでもかとばかりにいちごの赤色が並んだパフェを美味しそうに口に運んでいる。幸せそうな表情を浮かべて、ご満悦のようだ。

「そんなん僕とじゃなくてもいいだろ」
「やだな。これカップル限定なんだよ。たけるくん以外とたべる気なんてないよ」

 こはるの言葉に思わず声を失う。
 どうとらえていいのかわからなかった。いや、確かにこはるは僕の事を好きだとかなんとか言っていたのだけれど、別に僕達はつきあっている訳でもない。
 でもこはるの言葉はどうきいても、そういう意味にしかとらえられない。

 こはるは、可愛い。確かに可愛い。
 正直に言えば、こはるがもし本当に僕の事を好きなのだとしたら、それは嬉しいと感じていたと思う。彼女のような可愛い女の子に好きになってもらえるなんて、それだけで幸せなことだと思う。
 ただどうして僕のことを好きなのか。まったくわからない。だからどうしてもこはるの言葉をそのまま受け入れることは出来なかった。

「ところでパフェっていうのは、パーフェクトなデザートって意味らしいんだけど。そう考えるとパーフェクトいちごパフェって、頭痛が痛い感じだよね」

 そんな僕の気持ちをよそに、こはるはくだらない話を続けていた。ただパフェの意味は初めて知ったので、ちょっと感心もする。変わったこと知っているんだなって思う。
 ただそんなちょっとした会話も案外嫌な感じはしなくて、すでに僕は彼女の事を受け入れ始めていたと思う。
 あまり女の子と話すのが得意ではない僕にしては珍しいかもれない。

「いやそこはいちごにかかっているのかもしれないぞ」
「そっか。パーフェクトないちごなんだ。確かに沢山入ってるし」

 僕のフォローの言葉に納得がいったのか、こはるは満足そうにいちごパフェを口に運んでいた。単純にパフェが美味しいだけかもしれない。

「たけるくんも食べる?」

 言いながら僕へといちごパフェをすくって僕へと差し出してくる。

「いや、いい」
「えー。おいしいよ。食べようよ。一口だけでも、ほら」

 さらにスプーンを僕へとつきだしてくる。
 どうしたものか困ってしまって、僕は少し視線をそらす。
 その先にあったのは、クラスメイトの女の子達だった。僕の視線を感じたのか、すぐにこちらへと顔をむける。

「あれ、八神じゃない。こんなとこで会うなんて珍しいじゃん」

 彼女たちはからからと笑みを浮かべながら、僕の方を見つめていた。
 同時にこはるの存在に気がついたようで、楽しそうに口角を上げる。

「なんだ。デート中か。だめじゃん、彼女ほっといてよその女の子みてたら」
「い、いや」

 言いよどむ僕に女の子達は楽しそうに声を上げる。

「まぁ私があんまりにも可愛すぎるから見とれるのも仕方ないけどさ」

 自慢げに胸をはる子に、もうひとりの子がちゃちゃを入れる。

「ばーか。んなわけねーだろ。八神の彼女こはるだぜ」
「なにおう。そりゃこはるちゃんは可愛いけどさ。私だって捨てたもんじゃないと思うけど」

 女の子達はきゃいきゃいと騒ぎ立ていた。
 どうやら彼女達はこはるとは面識があるようだ。一年の頃に同じクラスだったか、中学が同じだったのかもしれない。

「いや、別に彼女じゃないんだけど」

 僕がぼそりとつぶやくように告げると、瞬間彼女達のおしゃべりが急に止まる。
 なぜだか妙な間が感じられた。
 女の子達は互いに顔を見合わせる。何か変なことを言ってしまっただろうか。

「あー、なんだ。まぁいいじゃん。こはるめっちゃ可愛いし、彼女ってことで」
「そうそう。八神にはもったいないくらいだし。それならつきあっちゃいなよ」

 しかしそれも一瞬のこと。すぐに僕をはやし立てはじめていた。

「こはるは可愛いし性格もいいし、非の打ち所がないじゃん」
「まぁ。強いて言うなら、胸か?」

 女の子達がこはるの胸元をじっと見つめていた。
 思わず僕もそちらを見てしまう。
 うん。確かに。胸はあんまりない。……じゃなくて。

「失礼な。ボクにだって胸くらいあるんだぞ。誰が大草原だ」
「いや、そこまではいってない。ま、強いて言うならスタイリッシュな胸だな」
「お、スタイリッシュ。いいフレーズだ。こんどからはそう言おう」

 こはるが半ば笑いながら答えると、彼女達も半分は冗談めいて話していた。このいいぶりからすればどうやらこはるとは、それなりに親しいようだ。

「ま、とにかく仲良くやれよ。んじゃ、うちらそろそろいくから」

 クラスメイトの女子二人はそう言うと軽く手をふって、すぐにお店を後にしていた。
 なんだか嵐が過ぎ去った後のように感じる。

「まったく。あいつら、人をみるとすぐボクの胸がないとかからかうんだ。失礼な奴らだよね」

 こはるはそう言いながらも、それほど嫌そうな感じは見せていない。やっぱりたぶん仲良しで普段から冗談を言い合えるような関係なのだろう。

「いや、なんとコメントしたらいいんだ。僕は」

 正直胸の話にはつっこみづらい。確かにこはるはさほど大きい方ではなさそうだけれど。そんなことをいったらセクハラになってしまう。

「んー。やっぱりたけるくんも、大きい方がいいの?」
「い、いや。別に。その。特にはサイズにはこだわらないというか」

 やっぱり胸のことをきかれても返答に困る。

「良かった。たけるくんなら、そういってくれると思った」

 自分の胸へ手をあてながら、胸元へと視線を送っていた。
 いやサイズうんぬんの前に、変に意識させないでほしいんですけど。さっきまで気にとめてもいなかった彼女の胸が気になって仕方ないんですけど。
 でも言うほどこはるは気にしてもいないのか、またパフェを食べるのに一生懸命になっていた。
 しかし気にもしていなかったけれど、なんだかこれじゃ普通にデートしているみたいだ。