ボクはどうしたらいいのだろう。
ただ空を見上げる。武田くんが協力してくれることにはなった。とはいえ、何をしてもらえばいいのかもわからない。
昨日はたまたま繁華街で会ったから、駅まで一緒に歩いた。
他愛も無い話をして、まぁ正直それなりには楽しかったとは思う。案外悪い奴じゃないんだなとは思えた。
とはいえ、たけるくんに抱く感情とは全く違う。
武田くんとは友達として接することは出来る。でも胸の中がきゅっと締め付けられるような、それでいてどこか温かく感じるような気持ちにはなれない。
たけるくんに会いたい。
でも会えない。
ボクが近くにいると、たけるくんの病気が悪化してしまう。
どうすればいいんだろう。
武田くんは『たとえば俺とお前が恋人同士みたいにいちゃいちゃしているところを見せつけたら嫉妬して思い出すんじゃないか』なんて笑っていたけど、それは丁寧に却下しておいた。
たけるくんに変な誤解をさせたくないし。それに真剣な提案ではあったみたいだけど、実はそういいつつもボクのことを諦めていないんじゃないかと疑ってしまったところもある。
でもまぁ手段としてはそういうのもあるかもしれないとは思った。
たけるくんの感情をかき乱したら、もしかしたら思い出してくれるかもしれない。
でももしかしたら、もっと強く忘れてしまうかもしれない。
いざとなればそういう手段を試してみるのもありかもしれないけど、でも出来ればそんな方法はとりたくなかった。
たけるくん以外の男の人と冗談でもふれあいたくはない。
「けどもしかしてボクって重い女の子かなぁ」
ぼそりとつぶやく。
世界がたけるくんのことばかりになっていて、もしかしたらたけるくんにとって重たく感じさせていたのかもしれない。そのせいでたけるくんはボクのことを忘れてしまったのかもしれない。
そんなはずもないのに、とりとめのないことを思う。
ただ、その瞬間だった。
「今日は誰も一緒じゃないんだね」
その声に背中にぞくりと冷たいものが駆け巡っていた。
忘れていた。
いや正直に言えば、忘れていたかった。だから無意識のうちに考えないようにしていたんだ。
恐怖で体が縮こまるのがわかる。
こいつが、いた。この街に戻ってきていた。忘れていた。忘れていたかったのに。
「ちょうどいいね。じゃあこの間は行きそびれたことだし、さあ一緒に行こうじゃないか。キミとはひさしぶりだから、ゆっくりつのる話もあるだろう」
こいつはボクの手をとる。
嫌だ。そう思うのだけど、体が震えて言うことをきかない。
肌がひりつくようで、一気に鳥肌が立つのを感じていた。
嫌だ。叫ぼうとしても、なぜか声が出ない。
助けて。嫌だよ。誰か助けて。
たけるくん。助けて。助けてよ。
心の底から願う。でもたけるくんはボクのことを覚えていない。前のように都合良く現れてくれるはずもなかった。
どうしたらいいのかわからない。
「今日はあの男はいないみたいだね。せっかくの親子水入らずの時間を邪魔されたのではたまったものではないからね。さぁ、お父さんと一緒に行こう」
こいつは辺りを見回して、たけるくんがいないのを確認すると、口元にいやらしい笑みを浮かべていた。
その作りもののような笑顔が、ボクの心に影を落としていく。
怖い。怖いよ。誰か。助けて。
誰か。誰か。
たけるくん、ボクは、ボクは。
心の中で救いを求めるのに、その声は誰にも届かない。
気がつくとこいつに促されるまま、ボクは歩き始めていた。
ただ空を見上げる。武田くんが協力してくれることにはなった。とはいえ、何をしてもらえばいいのかもわからない。
昨日はたまたま繁華街で会ったから、駅まで一緒に歩いた。
他愛も無い話をして、まぁ正直それなりには楽しかったとは思う。案外悪い奴じゃないんだなとは思えた。
とはいえ、たけるくんに抱く感情とは全く違う。
武田くんとは友達として接することは出来る。でも胸の中がきゅっと締め付けられるような、それでいてどこか温かく感じるような気持ちにはなれない。
たけるくんに会いたい。
でも会えない。
ボクが近くにいると、たけるくんの病気が悪化してしまう。
どうすればいいんだろう。
武田くんは『たとえば俺とお前が恋人同士みたいにいちゃいちゃしているところを見せつけたら嫉妬して思い出すんじゃないか』なんて笑っていたけど、それは丁寧に却下しておいた。
たけるくんに変な誤解をさせたくないし。それに真剣な提案ではあったみたいだけど、実はそういいつつもボクのことを諦めていないんじゃないかと疑ってしまったところもある。
でもまぁ手段としてはそういうのもあるかもしれないとは思った。
たけるくんの感情をかき乱したら、もしかしたら思い出してくれるかもしれない。
でももしかしたら、もっと強く忘れてしまうかもしれない。
いざとなればそういう手段を試してみるのもありかもしれないけど、でも出来ればそんな方法はとりたくなかった。
たけるくん以外の男の人と冗談でもふれあいたくはない。
「けどもしかしてボクって重い女の子かなぁ」
ぼそりとつぶやく。
世界がたけるくんのことばかりになっていて、もしかしたらたけるくんにとって重たく感じさせていたのかもしれない。そのせいでたけるくんはボクのことを忘れてしまったのかもしれない。
そんなはずもないのに、とりとめのないことを思う。
ただ、その瞬間だった。
「今日は誰も一緒じゃないんだね」
その声に背中にぞくりと冷たいものが駆け巡っていた。
忘れていた。
いや正直に言えば、忘れていたかった。だから無意識のうちに考えないようにしていたんだ。
恐怖で体が縮こまるのがわかる。
こいつが、いた。この街に戻ってきていた。忘れていた。忘れていたかったのに。
「ちょうどいいね。じゃあこの間は行きそびれたことだし、さあ一緒に行こうじゃないか。キミとはひさしぶりだから、ゆっくりつのる話もあるだろう」
こいつはボクの手をとる。
嫌だ。そう思うのだけど、体が震えて言うことをきかない。
肌がひりつくようで、一気に鳥肌が立つのを感じていた。
嫌だ。叫ぼうとしても、なぜか声が出ない。
助けて。嫌だよ。誰か助けて。
たけるくん。助けて。助けてよ。
心の底から願う。でもたけるくんはボクのことを覚えていない。前のように都合良く現れてくれるはずもなかった。
どうしたらいいのかわからない。
「今日はあの男はいないみたいだね。せっかくの親子水入らずの時間を邪魔されたのではたまったものではないからね。さぁ、お父さんと一緒に行こう」
こいつは辺りを見回して、たけるくんがいないのを確認すると、口元にいやらしい笑みを浮かべていた。
その作りもののような笑顔が、ボクの心に影を落としていく。
怖い。怖いよ。誰か。助けて。
誰か。誰か。
たけるくん、ボクは、ボクは。
心の中で救いを求めるのに、その声は誰にも届かない。
気がつくとこいつに促されるまま、ボクは歩き始めていた。