確率がたったの1でも0、1でも、なにか起きる時は起きるし、起こらない時は起こらない。

 ユーイチが発言した言葉の数々を思い出しつつ眺めていた飛行機は、どんどん空高くへと上昇していき、そのうち見えなくなった。

 青一色の空から目線を下に這わせれば、航空機事故などどこ吹く風で、きらきらと輝く水面(みなも)が目に入る。

 実感は、湧かない。けれど(したた)かに悲しみを堪えるユーイチのさまに、信じないわけにはいかなかった。

 この水面下のどこかに、ユーイチのお父さんは眠っているんだって。

 小さい頃から優しく接してくれて、遠方の病院までお見舞いにだって来てくれて。
 いつだって本当の娘のようにわたしを可愛がってくれた彼を思い出せば、一気に切なくなってしまう。

 彼とのメモリーを回顧し、悲嘆に暮れていると、ふいに誰かの声がした。

 和子ちゃん。ぼくの代わりにアメリカへ行って、夢を叶えておいで。

 その声は、空か海底からかはわからぬが、確とわたしの耳に届く。

「ユーイチの、お父さん……?」

 どこか懐かしみのあるその声は、ユーイチのお父さんのものとよく似ていた。