一瞬にして、まぶたを一番上まで上げたユーイチと目が合って、わたしはどこを見たらいいのかわからなくなった。

「で、でもやれることをやって、もしだめだったら、そしたら絶対後悔するじゃんっ」

 多少声を張りながら、今度は波ではなく、海の遠くに目をやった。

 するとそこには、忙しない波打ち際とは打って変わって、微動だにしない真っ直ぐと伸びた線があった。

 水平線。

 堂々と揺るぎない、あの線の向こう側にあるものを想像したら、たちまち恐怖で包まれた。

「和子……?」

 ふいに自分自身を抱きしめたわたしの顔を、ユーイチが覗き込んだ。

 身勝手に震えていく身体が憎い。
 さっきまで、ユーイチと自転車をふたり乗りした昔を思い出したりして、とても心穏やかだったのに。

「昨日の夜、ね……」

 ザザン ザザン

 激しいのか物静かなのかわからない、波の音。
 浜辺へとやって来る時は(いか)つい男性のように荒いのに、海へと帰る時はおしとやかな女性のように、しずしずと。

「昨日の夜、お父さんとお母さんが、ふたりでわたしのこと話してるの聞いちゃったの……」

 もしかしたらこの波もわたしと一緒で、気持ちが安定しないのかな、なんて思った。

 時折つっかえながら言葉を発するわたしの隣で、ユーイチは黙って聞いていた。

「ほ、本当は、無理やりにでもわたしをアメリカに連れて行きたいけれど、それじゃあわたしが反発しちゃうから今日説得しようって、そう言ってたの……」