そこでわたしに向けられる、ふたりの視線。ニヤニヤとどこか愉しげなテメさんの一方で、ユーイチのものは鋭かった。
「ち、ちがうからな!」
「なにが」
「俺は和子のこと、す、好きじゃないから!」
「そんなのわかってるよ。ユーイチが好きなのは、ちーちゃんでしょ」
わたしが入院していた頃、あんなに遠い病院まで毎日のように足を運んでくれたユーイチに、一度聞いたことがある。
「どうして毎日毎日、わたしに会いに来てくれるの?」
と。
すると今みたいに真っ赤な顔になったユーイチは、こう答えていた。
「お、お前じゃなくて、ちーちゃんに会いに来てんだよっ。あの子めっちゃ可愛いくて、まじタイプっ」
その時のわたしがショックを受けたのは、ユーイチのことが、好きだったから。
だけど彼の恋する相手がわたしの大好きなちーちゃんならば、応援したいとも思った。
あれから十年が経ったけれど、未だに恋人のひとりも作らないユーイチは、ちーちゃんのことがまだ好きなのだろうか。
昔を思い出しながら、「ユーイチが好きなのは、ちーちゃんでしょ」とかまをかけてみたわたし。けれど彼は口を一文字に結んでしまった。
対して口角が上がりっぱなしのテメさんは、閃いた様子で歌い出す。
おだんごちゃんと裕一くん
いいねえ ふたりは青春だ
俺もそんな時があったっけ
淡い青した春の日が
おだんごちゃんと裕一くん
いいねえ ふたりは青春だ
今を楽しめ存分に
今は今しかないんだから
最後にジャカジャカとギターのようにウクレレを掻き鳴らしたテメさんの即興ソングは、とても短いものだった。
「ち、ちがうからな!」
「なにが」
「俺は和子のこと、す、好きじゃないから!」
「そんなのわかってるよ。ユーイチが好きなのは、ちーちゃんでしょ」
わたしが入院していた頃、あんなに遠い病院まで毎日のように足を運んでくれたユーイチに、一度聞いたことがある。
「どうして毎日毎日、わたしに会いに来てくれるの?」
と。
すると今みたいに真っ赤な顔になったユーイチは、こう答えていた。
「お、お前じゃなくて、ちーちゃんに会いに来てんだよっ。あの子めっちゃ可愛いくて、まじタイプっ」
その時のわたしがショックを受けたのは、ユーイチのことが、好きだったから。
だけど彼の恋する相手がわたしの大好きなちーちゃんならば、応援したいとも思った。
あれから十年が経ったけれど、未だに恋人のひとりも作らないユーイチは、ちーちゃんのことがまだ好きなのだろうか。
昔を思い出しながら、「ユーイチが好きなのは、ちーちゃんでしょ」とかまをかけてみたわたし。けれど彼は口を一文字に結んでしまった。
対して口角が上がりっぱなしのテメさんは、閃いた様子で歌い出す。
おだんごちゃんと裕一くん
いいねえ ふたりは青春だ
俺もそんな時があったっけ
淡い青した春の日が
おだんごちゃんと裕一くん
いいねえ ふたりは青春だ
今を楽しめ存分に
今は今しかないんだから
最後にジャカジャカとギターのようにウクレレを掻き鳴らしたテメさんの即興ソングは、とても短いものだった。