体育座りをしていた自身の両足を、わたしはぎゅっと抱え込む。

「あの時のテメさんさ、自分は全然悪くないのにひどいことをされても、へっちゃらな顔してたでしょ?大事なウクレレを取り戻せたことに嬉しいとか言って、平然と笑ってるし」
「うん」
「そんなこと、わたしにはできないと思ったの。わたしは、わたし自身が全然悪くないのにこの病気にかかっちゃった自分のことを、決して笑うことなんかできない。それに今手元にあるものだけに満足して、喜べたりしないだろうなって」

 言って、糸のように細い溜め息が抜けていく。

 わたしの胸の中心にある心情を、改めて言の葉に乗せてしまえば、自分がどれだけ卑屈なのかと思い知らされてしまう。

「そっか」

 と、短く返すユーイチ。束の間静寂に包まれてしまえば、苦手なあの空気感に包まれてしまうから、わたしは話題を変えた。

「あ、そーいえばさ。結局昨日聞きそびれちゃったけど、ユーイチは、わたしと一緒にちーちゃんのとこに行くの?」
「え?」
「ほら、昨日病院の庭で話したじゃん。ちーちゃんへ誕生日プレゼントを渡しに、来月十年ぶりに会いに行こうって」

 ちーちゃんに関するトピックは、この場を明るくしてくれるはず。なぜなら彼女と過ごしたあの夏休みには、ユーイチもわたしも、良い思い出しか持ち合わせていないから。

「ちょっとユーイチ、聞いてる?」

 それなのに、時を移さずに表情を曇らせたユーイチは、すぐに返事をしてくれない。

 病院の庭でこの話が出た時と同じように、黙りを通して、じっとわたしを凝視するだけ。

 ちーちゃんのところへ行くか行かないか。わたしはただ、その答えがほしいだけなのに。

 うかがうようにユーイチを見つめ返せば、再び漂うあの空気。