チリンチリン チリンチリン

 翌日の朝一番。わたしはちーちゃんがくれたお守りを鳴らす。

 チリンチリン チリンチリン

 このお守りは、裁縫上手なちーちゃんがわたしのためにとフェルトを縫い合わせ、作ってくれたもの。

「和子ちゃんと離れちゃったら、一緒に治療を頑張ることはできないけど、このお守りが和子ちゃんの病気を、必ず治してくれるからね!」

 と快活に言った彼女が、プレゼントしてくれたのだ。

「ああそれと、和子ちゃんの恋とかも叶っちゃうから!」

 なんて言葉も付け足してたっけな。

 チリンチリン チリンチリン

 今はまだ、東の空が白んでいる早朝。

 お父さんと顔を合わせば、アメリカ行きの話が始まってしまうと恐れたわたしは、両親が目覚める前に家を出た。

 ユーイチの部屋の窓際で、鳴らし続ける鈴の音。だけどちっとも窓が開かないのは、おそらく爆睡中のユーイチのせい。

 もう、早く起きてよユーイチっ。いつまでもこんなところで鈴鳴らしてたら、不審者に間違われちゃうじゃないっ。

 なんて思って、どれだけわがままなのよ、とわたしは心の中で自分にツッコむ。

 アポも取らずに訪れて、玄関にまわることを面倒くさがり、部屋の前で無配慮に鈴を鳴らして呼び出して。
 そして、その呼び出しに応えないのならば、その相手に図々しくも苛つくなんて、どこかの絶対君主制の国の王様じゃないかと。