「なあんだ、それならうちの裕一を使えばいいじゃない」

 暑いなら帽子をかぶればいいじゃない、くらいのノリで、彼女はそんなことを言ったそうだ。

「裕一のことも、一緒に病院へ連れて行っちゃえばいいわよ。裕一には、和子ちゃんのことちゃあんと楽しませるように言っとくから」

 と、あっけらかんと。

 いくら親しい仲だとは言えども、片道二時間、往復で四時間はかかるそんな場所に、よそのお子様を連れて行くことには気が引けたお母さんだったようだが

「この帽子かぶりやすいから貸してあげるわよ、ほらほら」

 くらいのノリで息子を勧めてくるユーイチのお母さんに気圧されて、その好意に甘えることにしたらしい。

 わたしの通院の付き人に無理やり任命されたユーイチは、意外にも嫌な顔ひとつせずに、その任務を全うしてくれた。

 もちろん、学校がある日の通院に同行することは無理だけれど、今日みたいに夏休み期間や、その他の長期休みなどは、欠かさずわたしの側にいて、その往復四時間を楽しませてくれた。

 ユーイチと、過ごす時間。
 その時間が、わたしは昔からずっと好き。