ぼうっと写真を眺めるユーイチに続いて、わたしもその写真に目を向ける。
 するとそこには、テメさんを含めた三人の人物が写っていた。

 テメさんと、その隣にいるのは……

 この人たちは誰だとテメさんに聞かなくても、わたしには簡単に察しがついた。
 これは彼の元奥さんと、その子どもだろうと。

「家族写真だ」
「え?」
「これ、テメさんの家族写真だと思う」

 そう言うわたしに、ユーイチが「まじか」と呆れた声をこぼす。

「じゃあこいつ等が、このホームレスにテメエのテメってあだ名つけた人たちってこと?」
「子どもはともかくとして、奥さんはそうっぽいよね……」
「こんな綺麗な顔してんのに、腹ん中はドス黒いのなー」

 ユーイチがぼやく通り、写真に写るテメさんと同い年くらいの女性は、とても綺麗な人だった。
 その側で満面の笑顔を作って見せている三歳前後の女の子も、彼女とテメさんを足して二で割ったような、とても可愛らしい顔をしている。

 公園で撮られたらしきその写真だけを見れば、今の状況が信じられないほどに、仲睦まじい三人家族。
 それなのにどうして、と思ってしまえばまた、わたしはテメさんを不憫に感じてしまった。

「で、こんな大事な荷物放ったらかしにして、そのテメさんって人はどこ行ったん」

 ボストンバッグの中へ写真を戻したユーイチは、腰を上げ、辺りをきょろきょろ見渡し始めた。

 バッグのチャックをしっかり閉めて、元あった位置に戻し、わたしもよいしょと立ち上がる。

「トイレ、かな」

 いや、でもウクレレだけを持って行くかな?

「それか、買い物?」

 だったらなおさら、お財布が必要でしょ。

「コインランドリー、はちがうしなあ……」

 だってそれにも、お金は必須だ。

 テメさんの行きそうな場所を呟いては、横に首を振って否定するわたし。

 朝とは反対側から傾く陽が、立ち尽くすふたつの影を長く伸ばす。