それはそれで、なんか可愛いかも。

 って、そうじゃなくて、なんでいっつも雲に例えるのよ。

 と、そう思ったからそのまま聞く。

「なんでいっつもユーイチは、わたしの髪の毛を雲に例えるのよ。これはおだんごヘアだって言ってるのに」
「だって俺の部屋の窓からは、いっつも空と雲が見えるから」
「だからなに」
「だからさ、和子がそこから顔を出すと、それがいくら和子だってわかってたって、一瞬雲に見間違えちゃうんだよ」

 なんだその理屈。雲とわたしのおだんごヘアとじゃ、白と黒とで全く色が違うのに。

 そうツッコもうとしたわたしの前、「あとさ」とまだまだ話し足りなさそうなユーイチが続けてくる。

「あとさ、お前俺んち来る時、絶対ちーちゃんからもらったお守りの鈴鳴らすじゃんか」
「うん」
「この前もいつものように窓の外でチリンチリン鳴ってたから、和子が来たんだと思って、『また来たのかよ和子』つって窓開けたんだよ。だけどそれ、和子じゃなかった」
「え。じゃあその音、なんだったの?」
「誰かの自転車のベルだった。うちの前、けっこう自転車通るんだよな。なんかたぶん、大通りへの抜け道に使われてるっぽくて」

 わたしが来てもいないのに、わたしの名前を口にして、窓を開けるユーイチ。
 そしてわたしがいないことに気付き、ひとり静かにその窓を閉めるユーイチ。

 そんな彼の姿を想像したら、ぷぷっと笑えた。