自己主張の強い真っ赤な丸から目を逸らすように、ソファーの背もたれいっぱいに仰け反った。

 見上げた先の天井に、ちーちゃんを描く。
 彼女の眩しい笑顔。

 ねえ、ちーちゃん。会いたいよ。ちーちゃんに会いたくて会いたくて、時々寂しくてたまらなくなるよ。

 今度会えるのは、いつになるの?もう十年も会っていないじゃない。東京には、いつ来てくれるの?

 ちーちゃんに、わたし話したいことがいっぱいあるんだよ。まあ、電話でもいいんだけどさ、でもできることなら、直接会って話したいよ。

 ねえ、ちーちゃん。もうすぐちーちゃんの誕生日だね。今年の誕生日には、ちーちゃんに会って、その笑顔が見られるかな。

 天井で微笑むちーちゃんが、段々と色褪せていく。

 手元のスマホにつけられているお守りをぎゅっと握りしめて、それから画面をタップして。わたしは電話帳アプリの中、『安藤千尋』の名前まで指を走らせた。

「もしもし、ちーちゃん?急に電話しちゃってごめんね。特に用はないんだけど、声が聞きたくなっちゃって──」

 それから小一時間ほど、わたしとちーちゃんは会話に花を咲かせた。