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 ちゃぷんと黒い水面(みなも)がうった。小魚でも、跳ねたのだろうか。

 日が暮れたあとの川は闇のようで、うねうねと真っ黒なへびが何十匹も這っているようで、昼間の穏やかさは一切感じられない。

 小橋の欄干(らんかん)に、ことんと頭を乗せた。車も人も滅多に通らないこの静かな空間に、ちゃぷ、ちゃぷと柔らかな波音が響く。

 ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷん

 目を瞑って視界を閉ざせば、昼間と同じく穏やかだった。

「はっぴばーすでい、とぅーゆー……」

 呟くように、歌う。

「はっぴばーすでい……とぅーゆー…」

 わたしが歌っているその間も、波は絶え間なくうっている。

「はっぴばーすでい、でぃあ、ちーちゃん……」

 ちーちゃんは、今頃なにをしているのかな。

「はっぴばーすでい……とぅー…ゆー…」

 歌い終わると、まぶたの裏でちーちゃんが「ありがとう」と笑っていた。ふふっとこぼれる笑み。無性に彼女の声が聞きたくなる。

 そうだ、電話しようっ。

 ぱちっとまぶたを起こして、がばっと頭も起こしたわたしは、ハーフパンツからスマホを取り出し、『安藤(あんどう)千尋(ちひろ)』の名前をタップ。

 スマホについているのは、ちーちゃんが昔くれた鈴つきのお守り。
 チリンと優しい音色を奏でるこれは、もうかれこれ十年間、わたしと共に過ごしている。

 今日はちーちゃんに、なにを話そうかな。ユーイチがこの前、なんてことのない平坦な道で転んだ話はしたんだっけ。あの時のユーイチ、顔面から見事にいっちゃって、鼻血まで出してておかしかったんだよなあ。

 それはつい、先週の話。

 記憶に新しいユーイチのマヌケ面を思い出し、またもや笑みがこぼれるわたし。するとどこからか、こんな音色が聞こえてきた。

 ポロン