「ええ……絶対にまずいじゃん……」

 そのサイトのトップには、ココアとサイダーを使用した、ドリンクの作り方が載せてあった。

 画面を下へスクロールしたわたしの目に、次に飛び込んできたものは、ココアとサイダー、それに豆腐を加えたケーキが美味しいと紹介してあるページ。

 そしてこれ等の情報には、たくさんのイイねスタンプが押されており、コメント欄も賛辞でぎっしりと埋め尽くされていた。

 う、うそでしょ……?ココアとサイダーの組み合わせが、こんなにもたくさんの人に好評価されてるの……?

 それは、わたしの想像の範疇(はんちゅう)を超える出来事だった。大袈裟に言うと、震天動地の大事件だ。

 瞬きさえも忘れそうになるくらい、全身を衝撃が走り抜ける。
 しかしこんなに肝を潰されてもなお、わたしの頭は冷静に、こんな風に思っていた。

 ココアとサイダーの組み合わせはない。絶対にない。このセットが美味しいだなんて、わたしは信じない。

 と。

 はなからそう決めつけているわたしにとっては、このページを作成した人も、それに共感するコメントを残す人たちも、全くもって気が知れない。

 チョコとバナナは合うと思うし、お刺身には醤油とわさびが欠かせないと思うけれど、ココアとサイダーのセットはまずい。

 わけのわからぬ情報ばかりが載っているスマホの画面から目を外したわたしは、飴玉の袋を棚へと戻すと、結局なにも購入せずに、コンビニをあとにした。

 歩きながら、パンツポケットに突っ込む手。その手が触れた飴玉は指先で転がすだけに留まって、しばらくが経ち、わたしは自分の手のみを表へ出した。

 やっぱ今日も、舐める気にはなれないや。だって美味しくないに決まってるもん。

 そんな臆見(おっけん)だけで、「意外とイケる」と言ったテメさんからもらった飴玉を批難し続けるわたしが、これを食べてみたいと思う日など、一生来ない気がした。