しとしととまだ、悲しい言葉の雨は降ってくる。

「金がなくなって、家賃を払えなくなったから、三人で暮らしていたアパートはすぐに追い出されちまった。頼れる親も親戚も、もちろん俺にはいないから、もう一度会社の寮にお世話になろうと思って頼んでみたんだけど、だめでさ」

 どうして?とわたしは聞いた。するとテメさんは、「社長が体裁を気にする人だったから」と答えた。

「やっぱ格好つかないじゃん。嫁と娘に逃げられた人間を、置いとくのなんて」
「そんなっ……そんなの仕事には関係ないのにっ」
「どっかから変な噂が流れても困るって言われて、結局解雇されたよ」

 そう言って、自嘲気味に笑うテメさん。

 一方のわたしは、これっぽっちも笑えない。

「なによ、それ……」

 悲しくなった、苦しくなった。
 こんな辛い話を飄々と口にするテメさんを、もはや直視できなくなった。

 可哀想、とわたしはそんな気持ちでいっぱいになるのに、テメさんの余裕がどこからくるのかわからない。

 ウクレレを鳴らす場面なんかではないと思うのに、彼はあっけらかんと鳴らして続けた。

「だから今はとりあえず、この橋の下にお世話になってるっていう状態なのよ。さっきも言ったけど、命さえありゃあ人生盛り返せる可能性だってあるわけだから、ひとまずは道ばたで休憩してるって、そんなとこ。けっこう居心地いいもんだぜ、ここ。人通りも少ないから、気兼ねなくウクレレ演奏できちゃうし」