「テメさんって、意外とかっこいいんだね」
「え、なんだよいきなり。照れるな」
「歳は、二十五歳くらい?」
「まあ、大体そんな感じかな。今年で二十七になるよ」

 奥二重の、茶色い瞳。鼻筋が通っていて、唇は綺麗な山なりのかたち。

 羨むパーツが、これまた羨むほどに小さい顔についているのだから、どれかひとつくらい分けてちょうだいよと、口をついて出そうになる。

 テメさんの顔から、下にずらす視線。そこに見えたのは、昨日とは違うシャツ。

 あれ?今日は白いTシャツじゃなくて、水色のYシャツなんだ。

 わたしはてっきり、テメさんはお風呂も入らずにここで一夜を明かしたとばかり思い込んでいたから、彼の服装が変わっていたことには驚いた。

 ぱちくりと瞬きながら、テメさんの観察を続けるわたし。すると彼の傍に、サッカーボールがみっつは入りそうな、黒くて大きなボストンバッグが見えた。

 こんなの昨日はなかったような……あ、でももしかしたら、毛布が上に乗っかってて見えなかっただけかも。

 そんなことを考えながら、これじゃあまるで、一種の間違い探しじゃないかとふと思う。

 テメさんがいるかどうかを確認して、服装をチェックして。昨日見たものは幻なんかじゃないって、確かめているような。

 わたしの視線の先を追ったテメさんは、ドアをノックするようにして、そのバッグを中指の背で二回叩く。

「なんだよおだんごちゃん、じーっと見ちゃって。これ、気になんのか?」

 うんと大きく頷いた。橋の下で暮らすテメさんの持ち物に、一瞬にして興味がわいた。

「べつに、大したものは入ってねえよ。着替えとか歯ブラシとか、あとは財布や時計」

 けれど中身は見せてもらえなかった。開けて見せてよ、と言える立場でもないので、わたしは「へえ」と言うだけに留まった。

 数秒ほど、流れる静寂。
 テメさんが、短く聞く。

「学校は?」