「和子っ……」

 和子の前では決して見せなかった涙を、彼女が発ってから一度だけ、俺は惜しみもなく流した日があった。

 吐くんじゃないかってほど泣いた。
 和子を想ってたくさん泣いた。
 快く和子を送り出した俺だけれど、不安が全くないわけじゃないから。

 だけど、それでも。

 俺が信じてやまないのは、自室の窓からまた、和子の笑顔が見られる日。

 ユーイチっ。

 いつでもどこでも、耳に残っている和子の声。

 ねえ、ユーイチってば。早く開けてよっ。

 べつに夏じゃなくても、秋でも冬でもいいからさ。

 おはよ、ユーイチっ。

 俺はいつでも待ってるよ。小さな頭にちょこんと乗った可愛らしい入道雲と共に、大好きな君のことを。