ねえちーちゃん、力を貸して。
 アメリカに行くと決心して強く結んだ靴紐が、解けないように。

 うん、わかった。

 と、ちーちゃんの声が、耳元で囁かれた気がした。

 大丈夫だよ、和子ちゃん。

 って。優しい声で言ってくれた気がした。

「帰ってきたら、ユーイチに好きだって告白するっ……」

 だけど結局は、こぼれた涙。ぽつんと落としてしまった雫を見られたくはなくて、俯いた。

「告白して、付き合って、遊園地とかカラオケとか色んなとこ行きたいっ……」

 告白することを告白するという、こんな滑稽(こっけい)な告白は見たことも聞いたこともないけれど、わたしは未来の予定がほしかった。

 ユーイチとの幸せな予定が未来にあれば、きっと強く心を持てるって、そう思ったから。

「和子……」

 涙をそっと指ですくわれて、わたしは顔をゆっくり上げる。すると潤んだ瞳をつけたユーイチが、なんだかすごく照れている。

「お前、今の言葉ほんと……?」
「ほんとだけど……」
「帰って来たら『やっぱなし』とか、受け付けねえぞ……?」
「わたしもオーケー以外の返事は、受け付けないよ……?恋人になったあかつきには、わたしのこといっぱい抱きしめるんだよ……?」

 こんなオラオラな告白にも、嬉しそうにしてくれるのだから、これは自惚れなんかではなく、ユーイチとは両思いで間違いなしだ。

「大好きだよ、ユーイチ」

 フライングで愛を伝えると、彼もまた、フライングでわたしを抱きしめた。

 大好きな人の腕の中、優しい温もりをたくさん感じて、幸せをじゅうぶんに味わって。

「絶対帰って来いよ、和子。俺等が信じるのは10パーセントの確率なんかじゃなくて、無限大の可能性だ」

 そしてわたしは、アメリカへと飛び立った。