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 手術の日取りもまだ決まっていないのに、逸る気持ちを抑えきれなかったお父さんが取ったアメリカ行きのチケットは、夏休みの最終日に日本を発つというものだった。

 だからわたしは、果穂と七海の予定を慌てて確保し、すれ違ったこの二ヶ月半を埋めるように、丸一日をかけてたくさん遊んだ。

 手続きもあったし、荷造りにも追われていたし、向こうで必要なものの買い出しも忙しかったしで、この夏わたしが入り浸っていたユーイチの部屋へと久々に訪れる頃にはもう、アメリカ行きを明日に控えてしまっていた。

「ふざけんな入道雲女。お前が顔見せない間に、俺が何度ばかみたと思ってるんだ」

 わたしが窓から入室するやいなや、口を尖らせるユーイチ。「何度もばかみたの?」と聞くと、「おう」と素っ気なく返ってくる。

「聞いて驚け。他人の鳴らす自転車のベルを和子の訪問だと勘違いすること十回、そのうえ窓から見えた入道雲に『和子』と呼びかけちまったのが三回。計十三回、俺はお前のせいでひとり寂しく赤っ恥をかいたんだ」

 わたしが来てもいないのに、わたしが来たと思って窓を開けるユーイチ。
 そしてわたしがいないことに気付き、ひとり静かにその窓を閉めるユーイチ。
 そしてさらに、入道雲にまで話しかけるなんて。

「ぶはっ」