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 玲ちゃんを想ってテメさんが作った曲は、彼の歌声を通した途端に名曲だと思えた。

「よし、じゃあこれにちょっと編集を加えたら、即行でネットにアップしますねっ」
「よろしく頼むよ」

 楽しそうなユーイチに、嬉しそうなテメさん。
 橋の下は暗いけれど、雰囲気だけは極めて明るい。

「おや、どうしたのおだんごちゃん。浮かない顔しちゃって」

 一方で、わたしだけが曇り気味。それは海での一件を、やはりテメさんに伝えるべきだと思い悩んでいたから。

「ネットに上げるのもいーけど、直接会って聞かせたほうが早いかもよ、テメさん」
「え?直接?」
「わたしたち、玲ちゃんとテメさんの元奥さんに会ったの。銚子の海岸で待ち伏せすれば、また会えるかもしれない」

『テメエ』の『テメ』をとったひどいあだ名を元夫につけた、元奥さん。

 かつては幸せだったふたりの間になにがあったのかは知らないし、聞くつもりもないけれど、娘が大好きだった歌声を届けたいというテメさんの想いを邪魔する権利は、誰にもないと思った。

「お願いだから銚子に行って、テメさん。玲ちゃんがいつかテメさんの動画を発見してくれる日を待つよりも、行動したほうがずっと早いから」

 それは、半分ユーイチの受け売りだった。
 やれることからやったほうがいいって、彼は海で言っていた。

 ぽりぽりとこめかみを掻いたテメさんの傍で、そのユーイチが「すんません」と謝った。