「よかった和子っ!まだ日本にいたんだね!もしかしたらもうアメリカに行っちゃったのかと思って心配してたんだよ!」

 両親が仕事で不在のお昼過ぎ。ふいに鳴ったインターホンのモニターを見てみると、そこには前まで恋バナをするくらい仲の良かった、クラスメイトの果穂と七海の姿があった。

 はい、と出たわたしの声によって、わたしの在宅を確認した彼女たちは、安堵したような表情を浮かべていたけれど、正直わたしは戸惑った。

 だってもう、わたしたちの間には太いボーダーラインがあると思っていたから。

 おずおずと、開ける玄関扉。
 するといきなり抱きつかれて、さらにまごつく。

「こら和子!ラインくらい返せこのやろ〜!」
「ちょっと七海、和子のことびっくりさせないでよ!それでもし心臓に負荷がかかったらどうするの!」

 果穂から注意を受けた七海は「ごめん!」と言い、わたしからぱっと手を離す。

「え、えっと……」

 と、言葉に詰まっているわたしに向けられるのは、ふたりの優しい笑み。

「和子、今日空いてる?」
「え。う、うん……」
「よかった。じゃあちょっと、お茶でもしよーよ」

 にこっとえくぼを作られて、思わず頷く。

 クラスのライングループ内で、テンション違いなメッセージを送信してきたふたりには不満を抱いていたはずなのに、わたしは今、いつもと変わらない態度で接してくれる彼女たちに嬉しく思っている。