十年前、彼がちーちゃんのことを可愛くてタイプだと言ったあの日を機会に、諦めたと思っていたのだけれど、まだ胸の中(ここ)に、どうやら彼への恋心はひっそりと潜んでいたらしい。

 未練がましい己に呆れたわたしは、ふっと自嘲し、スマホについているお守りを握った。

 チリン

 鈴の音色と共に耳へ聞こえるのは、ちーちゃんがこれをプレゼントしてくれた時に言った言葉。

 ああそれと、和子ちゃんの恋とかも叶っちゃうから!

 あの時の、ちーちゃんの自信にあふれた表情といったらない。このお守りさえあれば、どんな願いだって叶う気がした。

 アメリカに行く決心をしなきゃと考えごとをしていたはずなのに、いつの間にやら全く違う方向へと頭が切り替わっていたことに、わたしは気付かないまま眠りへ落ちる。

 お父さんとお母さん
 ユーイチとちーちゃんとテメさん
 それに、ユーイチのお父さん

 たくさんの人が登場したその晩の夢を、起床と共に綺麗さっぱり忘れちゃったことを、わたしは数日が経ってもなお、悔しく思っている。