お父さんの真剣な瞳のその奥に、ただならぬ決意が見えた。
 強くて固いそれをありありと感じたわたしは、もう一粒唾を飲み込む。

「手術を受けるか受けないか、もうそんな話じゃなくて。今すぐ受けないと間に合わないんだ、和子。こうして足踏みをしている間も、刻一刻と、時は進んでいる」

 火傷をした時のような、ひりひりとした感覚が腕に走った。
 じりじりと焼かれているような、そんな感覚。

 四方八方を砂に囲まれた、行き場のない砂漠。そんな場所で途方に暮れながら生きるわたしのオアシスに、果たしてアメリカはなれるのだろうか。

 ねえ、ちーちゃん。ちーちゃんはどう思う?

 返答をしないわたしが作ってしまった、静粛なムード。

 神妙な面持ちを保つお父さんの隣で、お母さんが「ごめんね」と謝った。

「和子を健康な身体に産んであげられなくて、本当にごめんね……」

 その言葉は、わたしの胸を打つ。

「お母さんがいけなかったね。和子をもっと元気に産んであげていたら、和子だってこんなにも不安になることなかったのに、本当にごめんなさい……」

 物腰の柔らかな言い方なのに、お母さんが発する一語一句がまるで槍のように飛んできて、わたしの心にグサグサと穴を開けていく。

「お父さんだってお母さんだって、本当は怖いっ……手術中、万が一和子になにかあったらどうしようって、不安でたまらないわよっ……」

 そう言って、涙ぐむお母さん。

 わたしと同じ不安を抱く両親が、どうやってこの決断をできたのだろうかと思っていると。

「でもね、和子。この不安は、日本にいたところで拭えないの」

 と、お母さんははっきりと言った。