矢継ぎ早に、計五つの疑問を問いかけた。

 勝手に動いていた足が、わたしと彼との距離を縮める。

 気付けばわたしも橋の下。一メートルも離れていない場所から、彼を見下ろす。

「うん。ここで毎日寝てるよ」

 わたしのことを見上げながら、まずひとつ目の質問に答えてくれた彼。ふたつ目みっつ目と、順番に回答していく。

「ご飯はスーパーとかでテキトーに買って食ってる。トイレは近くの公園にあるし、べつに困ってない。風呂は銭湯に行く時もあるけど、番頭さんや他の客に嫌な顔されたりもするから、公園の水道で済ますことも多いよ」

 四つの質問にスラスラと答え終わると、彼は一度口を結ぶ。わたしから目を逸らし、「家族ね……」と、無機質なアスファルトへ呟く。

「おだんごちゃんは、どんな家族と住んでるの?」

 グレーのアスファルトから、再びわたしへと戻った彼の視線。先ほどまでとは打って変わってどこか物憂げに見えたのは、わたしの気のせいだろうか。

「お父さんとお母さんはいる?兄弟は?ちゃんと仲良く暮らしてるの?」

 その問いで、頭に浮かんだお父さんとお母さんの顔だけれど、それは笑顔なんかじゃなかった。

「兄弟はいない。両親はいるけど、仲が良いかどうかはわからない」

 いつの間にやら、敬語がとれていたわたし。その言葉遣いのまま、続ける。

「お父さんのこともお母さんのこともべつに嫌いじゃないし、むしろ好きなほうだけど、最近は、あんまり家にいたいと思わない。両親(ふたり)と会話とか、したくない」