和葉がかじかんだ両手を温めようと、はぁっと息を吐くと白かった。


「お待たせしました、東雲殿」


寒さで震える和葉をその場に残し、貴一、八重、乙葉の順に玻玖がいる客間へと入っていく。

乙葉は和葉を見下ろし、フッと嫌味な笑みを浮かべながら。


「いや〜。大変お待たせして申し訳ない、東雲殿」


あれだけ神導位の座を奪われたことに逆恨みし、暗殺までくわだてている貴一。


しかし、それが悟られぬように、友好的な雰囲気を醸し出していた。


「東雲様、遠路遥々(えんろはるばる)ようこそお出でくださいました」

「東雲様、お久しぶりでございます。乙葉です!」


八重も乙葉も、いつもより高い声で貴一のあとに続く。


しばらくの間は、世間話をしているようだった。

玻玖はあまり語らず、貴一たちが一方的に話していた。