黒百合家の者として、乙葉の縁談を見ておくようにという貴一だが、和葉が客間にいるのは都合が悪かった。


和葉は、病気を患って寝込んでいると噂されている。

元気に屋敷の中を歩き回る姿など、玻玖に見られるわけにもいかなかった。


お客様に見られないのであれば、和葉がどんなにみすぼらしい着物を着ていようとかまわない。

貴一が言いたいのは、そういうことだ。


「わかったな、和葉」

「…はい」


和葉は口を真一文字に結びながらうなずくと、貴一に連れられて客間へと向かった。


貴一には、ここで待てと言われる。


言われた場所で、冷え切った廊下に正座をする和葉。

障子越しに中の話し声は聞こえるが、来客が座る上座からは見えない位置だった。


ひんやりとした冷たさが、足先から徐々に上半身へと伝わってくる。