貴一のたくらむ恐ろしい計画を、息を殺して部屋の隅で聞いていた和葉。

そんな和葉に、貴一は鋭い視線を向ける。


「和葉、この話は他言無用だぞ」


緊張した面持ちで、とっさに何度も首を振る和葉。


「そうか。和葉は物わかりがいいからな。それでは、黙ってわしの言いつけを聞けるか?」


その言葉に、はっとして顔を上げる和葉。


――“言いつけ”。

これを守れば、お父様から褒められる。


でも――。


和葉は、貴一から褒められたいと思う一方、顔は知らないが東雲家当主という1人の人間が殺されるかもしれないという気持ちに(さいな)まれていた。


「わかったな、和葉」


しかし、貴一にそう念押しされると、どうしても自分の感情よりも貴一の言葉を優先してしまいたくなる。


それから、東雲家との縁談話はトントン拍子に進んだ。