負の呪術は、種類によっては自然なふうを装って相手を殺すこともできる。

つまり、玻玖を病死と偽って殺めることも可能。


「そうなれば、すぐに乙葉は黒百合に戻ってこさせればいい。東雲家から、もらうものをすべてもらってからな。人生を共に歩むと誓ったはずの夫がいないのだから、みなが乙葉を憐れみ、だれも文句は言わんだろう」


帝も、まさか黒百合家が負の呪術を悪用しようと考えているとも思っていない。

それに、バレなけばお咎めもないのだから。


黒百合家なら、負の呪術の隠蔽(いんぺい)もたやすい。


それを聞いた乙葉は、ごくりと唾を呑み込む。


「お…お父様、お話はわかったけど…。わたくし、そ…その、人を殺めるだなんてそんなこわいこと――」

「だったら、乙葉はあやつを動けないように負の
呪術で縛ればよい。あとは、屋敷に忍び込んだわしが始末しよう」