「乙葉の言うとおり!絶対に乙葉は手放しません!!」


乙葉も八重も、貴一に噛みつきそうな勢いだ。

金切り声が響く部屋は、耳が痛くなるほど。


「2人の言い分はわかったから。だから、いったん落ち着くようにと言っておるだろう!」


貴一は使用人にお茶を持ってこさせ、一度八重と乙葉を座り直させる。

ズズズと湯呑みに入ったお茶をすする2人。


「…まったく。ようやく静かになったか」


貴一も湯呑みのお茶をひと口飲む。

そして、それをそっと畳の上に置く。


「話はまだ途中だ。文句があるなら、最後まで聞いてからにしなさい」


貴一にそう言われ、口をとがらせる乙葉。


「…わかったわ。それでお父様、どういうことかしら?」

「ああ。先程も言ったとおり、乙葉の縁談相手は東雲家にしようと考えている」