「わかっている、乙葉。だれがあのようなやつのところへなど、大事な娘をやるものか!」

「本当に、無礼にも程があるわ!乙葉は黒百合家の跡取りだというのに、嫁にこいだなんて!」


3人の結束は固く、玻玖の文は貴一によって細かく破り捨てられた。


…しかし、貴一と八重の頭の中には、ほんの一瞬だけ東雲家との縁談もよぎった。


というのも、現神導位は東雲玻玖。

神導位の呪術家系から縁談を持ちかけられたのなら、それだけで断る理由などない。


だが、将来黒百合家を背負って立つ優秀な呪術師の乙葉をみすみす嫁にやるわけにはいかない。

かと言って、玻玖が婿にくると言っても、あのいけ好かない男が婿養子…。


一番いいのは、和葉が少しでも呪術を持っていてくれさえすれば、喜んで乙葉の代わりに東雲家へと嫁がせたのにといったところだ。