「お父様!これ…!」


驚いた様子でその文を貴一に見せる乙葉。

それを見た貴一は、瞬時に眉間にしわを寄せる。


そこに書かれていた差出人の名前とは、――『東雲玻玖』。


そう。

呪披の儀で黒百合家を打ち負かした、あの東雲家当主からの文だった。


「あやつめ…!なにかの冷やかしか!?」


怒った貴一は、荒々しく封筒の口を手でむしり取る。

そして、力の入った指先で中に入っていた文をつかむ。


そこに書かれていたのは、黒百合家の長女を嫁として迎え入れたいという内容だった。


「うちの乙葉を…あの東雲にだと⁉」


憤慨する貴一。

貴一の指先が触れているところは、文がくしゃくしゃにしわになっていく。


「…いやよ、お父様!わたくし、あんな狐の面の変な男のところへなんて、お嫁になんか行きたくないわ…!」