そのため、和葉と乙葉の誕生日には、あちこちから縁談の文が届いたのだ。


「見て!お父様、お母様!わたくしと結婚したいとおっしゃる方が、こんなにたくさん!」


大量の文の数に、喜ぶ乙葉。

酔いしれる乙葉は、自分ではなく黒百合との繋がりがほしいがための縁談ということにはまったく気づいていない。


「この中から、将来のわたくしのお婿さんになられる方がいらっしゃるのね」

「そうではあるが、急ぐことはないぞ。黒百合家のこれからに関わる大事な婿だ。慎重に選ばなくてはな」

「そうね。なにも17歳になったからって、すぐに結婚しなければならないわけではないのだから」


と言う貴一と八重は、乙葉がかわいすぎるあまり、当分の間は縁談させたくないというのが本音であった。


「…あら?」


そんな大量の文の中から、乙葉はある差出人からの文を見つける。