そんなぽっと出の呪術師が、果たして黒百合を打ち負かし神導位になることなどできるのであろうか。


呪披の儀の後、貴一は部屋にこもってなにかを調べているようだった。

八重は、屋敷に戻ってからも周りの噂が気になって外には出たがらず、『治癒ノ術』を求めてやってきた患者たちも突き返した。

乙葉は、玻玖に『予知眼ノ術』で負けたからといっても鍛練する様子もなく、腹いせに和葉や使用人をこれまで以上にいびっていた。


しかし、1ヶ月もすれば徐々に八重の機嫌ももとに戻り、乙葉を連れて買い物にも出かけるようになった。


そして、調べものをしていた貴一があるものを見つける。


「…これだっ!『東雲』…、まさかこんなところにいたとは」


貴一は、蔵から引っ張り出してきたある書物を持って、居間でお茶を楽しむ八重と乙葉のところへやってきた。