「そうか。ご苦労であった」

「…待て、東雲!」


部屋から出ようとする玻玖を貴一が呼び止める。


「まだなにか…?」

「貴様なら『予知眼ノ術』で、翌日どちらが神導位の地位を言い渡されるのかが…視えたのではないのか?」


貴一の言葉に、玻玖の肩がわずかに動く。

そして、遠くのほうに目を移す玻玖。


「そうですねぇ。視ようと思えば」

「ならば、こうなるということはわかっていたということか?それとも、余程自分に自信があってその必要もなかったか…」

「そんなことないですよ。買いかぶりすぎです。今回は帝さんに、『予知眼ノ術』で視るようにと言われたからそうしただけのこと。予めなにが起こるかわかっていたら、人生つまらないでしょう」


貴一に目を向け、微笑む玻玖。


「…そうです。最後に『予知眼ノ術』で後の世を視たのは、もうかれこれ…300年も前のこと」