「初めにも言いましたとおり、俺は神導位になんて興味はありませんので。それなら、どうぞ黒百合さんに」


このとき、貴一は不覚にも迷ってしまった。

ほんの一瞬だけ。


しかしすぐに、帝の命令が覆るわけがないと悟り、玻玖を睨みつける。


「馬鹿にするのも大概にしろ!貴様からなど、情けは受けぬわ!」


鼻息を荒くする貴一。

こんなに取り乱した貴一を見るのは、八重も乙葉も初めてだった。


「それに貴様のその軽率な言動は、『神導位』の地位を言い渡した帝様をも侮辱することと同じであるぞ!」

「……たしかにそうですね。これは失礼しました、帝さん」


帝に対して、軽く頭を下げる玻玖。


「よいよい。そなたがこれから立派に神導位の務めを果たすのであれば、わらわはなにも言わん」

「ありがとうございます。それじゃあ、俺はそろそろお(いとま)します」