玻玖に言い負かせれた貴一は、一瞬言葉に詰まる。

たしかに、玻玖はそんなことは言っていなかった。


そうだったとしても、すぐに納得できるはずもない。


「それにそもそも、呪術師として胡散臭(うさんくさ)い貴様が乙葉以上に視えているだと…!?」

「まあ、そういうことになりますね」


玻玖の口角が少しだけ上がった。

細長くつり上がった目の狐の面のせいで、その表情は貴一にとっては馬鹿にして笑っているように見えた。


「…貴様ぁ!!」


怒る貴一の体の周りには、まるで湯気が揺らめくようにゆらゆらと空気の層がうねる。

ビリビリとした感覚が肌を刺し、貴一の圧が重くのしかかる。


だれが見ても、我を忘れて玻玖に向けて負の呪術を発動しようとしているのが伝わってきた。


「貴一よ、なにをしておる」