「困ります、帝さん。俺はなにも神導位になるつもりなどないのに。辞退してもいいですか?」

「相変わらず、そなたはおもしろいことを言うの〜。わらわの(めい)は絶対じゃ。この5年、神導位としてその務めを果たすように」

「…と言われましても。それに、今ここでこんな水晶をもらっても荷物が増えるだけなのですが」


玻玖は小言をもらしながら、渋々月光晶を受け取る。


この300年もの間、長きにわたり黒百合家の誇りとして守り続けてきた月光晶。

それを、突然呪披の儀に連れてこられただけの呪術師の手に触れられることが、貴一はとてつもなく耐え難かった。


「お待ちください、帝様!これは一体、どういうことでしょうか!!」


貴一は立ち上がり、声を荒げる。


「どうした、貴一よ。そなたが大声を出すとは珍しいの〜」