帝があのような男を連れてきたのは誤算だったが、これでようやく黒百合家の神導位継続が決定する。


貴一は心の中でそうつぶやき、勝利を確信していた。


だからこそ、そのあとに帝から言い渡される言葉に耳を疑った。


「新たな神導位には、東雲玻玖を命ずる」


一瞬、この場の時間が止まったかのようにしんと静まり返る。


だれも声を発しない。

いや、発せられなかった。


なぜなら、黒百合家の貴一、八重、乙葉は、驚きのあまり口をぽかんと開けたまま固まっていたのだから。


「み…、帝様…。今、なんと…」

「…え?神導位が…黒百合じゃない…?」

「どうして…。わたくしの『予知眼ノ術』は完璧なのに…」


現状の理解に苦しむ3人。


そんな3人の前で、貴一が今回の呪披の儀で返還した神導位の証である月光晶が、帝の手によって玻玖へと引き渡される。