「それにしても、貴一さん。なぜあの若僧が『予知眼ノ術』を使えないとわかっていて、あえて乙葉と手合わせを？」

「そんなの決まってるだろう。あいつの鼻をへし折るためだ。少し呪術が使えるからと意気がりおって。乙葉相手ではまったく勝負にならないところを見せつけて、帝の前で恥をかくがいい！」


大声で笑う貴一。


「まあ、貴一さんったら意地悪なことをされるわ。今頃あの若僧、きっと別室で泣いてることでしょうね」


八重も口元に手を当てて、クスクスと笑っている。


「本来３日間で終わる呪披の儀が、まさか明日に持ち越しになるとは思わなかったが、使用人たちに伝えておくか。屋敷への到着が１日遅れると」

「そうですわね。文を飛ばされたほうがいいわ」


余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)に皇居の手入れの行き届いたすばらしい庭園を見つめる貴一と八重。