驚き、喜ぶ帝。

だが、この中で最も度肝を抜かれていたのは――貴一だった。


なぜなら、貴一はこれまで自分に匹敵するほどの呪術師と出会ったことがない。

玻玖がついていけずに早々に勝負がつくと思っていたから尚更だ。


「…ほう。お主もなかなかやるな」

「いやいや、そんな。黒百合さんの呪術についていくのがやっとです」


と言いつつも、余裕の笑みがうかがえる玻玖の口元。

貴一に焦りの色が見え始める。


呪術に関しては絶対の自信を持つ貴一。

しかし、自分の呪術以上のものを簡単にやってのけてしまう玻玖を前にして、平静を装うので精一杯だった。


ある言葉が、貴一の頭の中を一瞬よぎる。


『このままでは、神導位の地位が危ない』


――と。


「なんとまあ…困ったことじゃ。貴一、玻玖共に呪術の力はほぼ互角。決着のつけようがないの〜」