「ですが…!!一度手合わせをしてみないことには――」

「やめなさい、八重!」


突然の貴一の怒鳴り声に、肩をビクつかせて萎縮する八重。

貴一の背中からは、おどろおどろしい気迫がにじみ出ていた。


八重は、とっさに口をつむぐしかない。


「帝様が『必要ない』とおっしゃっているのだ。お前が口を挟むことではない」

「…も……、申し訳ございません…」


渋々と頭を下げる八重。

奥歯を噛みしめ、とても納得しているようには見えない。


「帝様。お見苦しいところをお見せしてしまい、まことに申し訳ございませぬ」

「構わん。気にするでない」

「寛大なお心遣い、感謝申し上げます」


深々と頭を下げる貴一だったが、本当のところは八重と同じで、悔しさを隠すので精一杯だった。

なぜなら、八重の『治癒ノ術』を披露することなく負けを言い渡されたようなものなのだから。