その表情は、『わしに勝てるとでも思っているのか』と言いたげだ。


「…まあ、それをやってここから帰してくれるのなら――」

「お待ち下さい、帝様!」


突然、玻玖の話を遮るように八重が顔を上げる。


「ほう、八重。いかがした?」

「お話によりますとこの者、『治癒ノ術』が得意とのこと。ここはひとつ、まずは私とお手合わせを」

「そうじゃな。そなたも有名な『治癒ノ術』の使い手であるな」

「はい。ですので――」

「しかし、その必要はない。わらわは玻玖の『治癒ノ術』をこの目でしかと見たが、その力は八重…そなたをも凌ぐ」


帝の言葉に、目を丸くしてあからさまに驚く八重。


「そ…、そんな…!私以上の『治癒ノ術』の使い手など、今の世にいるはずがありません!」

「それが、いたのじゃ。わらわも驚いたものよ」