死傷者の出た大規模な火事で、消火活動にあたっていた皇居の兵たちも巻き込まれ、ひどいやけどを負った。


そこにたまたま通りかかり、負傷者の手当てを行ったのが、この『東雲玻玖(しののめはく)』と名乗る若い男であった。


玻玖は、触れるだけでやけどをあっという間に治してしまい、本来なら助かるはずのなかった人々を大勢救った。

皇居の兵たちも玻玖のおかげで命拾いし、帝は玻玖に感銘を受ける。


並外れた『治癒ノ術』に玻玖の呪術師としての力量を見出した帝は、呪披の儀に出席するようにと促した。

しかし、玻玖は「そのようなものに興味はない」と伝え、出席の意志は見せなかった。


呪披の儀への参加は呪術師としては名誉なことで、帝直々の申し出なら尚更のこと。


それをあっさりと断る型破りな玻玖を帝はおもしろがり、こうして最終日のこの場に無理やり連れてきたのであった。