そもそも、神導位に最高の呪術師が選ばれる最大の理由は、万が一他の呪術師に帝が命を狙われた場合、その呪術師に対抗し、打ち負かす力が必要であるため。

だからこそ、呪術師の中で最も力ある呪術師が神導位に選ばれるのだ。


こうして初日、2日目と呪披の儀で側近たちの審判が行われ、黒百合家は難なくそれを通過した。


そして、いよいよ呪披の儀最終日である3日目。


『予知眼ノ術』を持つ隠し玉の乙葉を出す必要もないほど、黒百合家が他の呪術師を圧倒。

側近の審判ではまだ披露していない貴一と八重の呪術も他に残っていた。


今回も夫婦2人だけの呪術で帝を魅了し、黒百合家が神導位を継続すること間違いなし。


――そう思われていたが。


「貴一よ。此度(こたび)も珍しい呪術の数々、まことにすばらしかったぞ」