「とは言ったって、…これってただの帝様の贔屓(ひいき)じゃないか?神導位だからって」

「…そうだな。なんせ、300年も黒百合家に守られてきてるんだからな」


周りの呪術師たちが小声で話すように、それが正の呪術であるか負の呪術であるかという曖昧な場合は、すべては帝のさじ加減で決まると言っても過言ではない。


今回の貴一の負の呪術の件は、それが神導位の務めとして正しい行いであったと、帝は大いに評価した。


帝と黒百合家は、300年間という長い時をへて紡いできた信頼関係で結ばれている。

帝も、神導位の黒百合家が呪術を乱用するとも考えておらず、やむを得ない場合の負の呪術であれば、だいたいのことは目をつぶるのだ。


それはまさしく、だれかが言っていたように“贔屓”。

しかし、それがまた神導位の特権であったりもする。