「…は?なにを言ってやがる」

「わしは、帝のお命をお守りするために呪術を使った。つまりそれは、帝のお役に立つことができる正の呪術ということだ」

「なっ…!そんなの、ただの屁理屈じゃねぇか!」

「屁理屈かどうかは、帝がご判断されること」


実際、そのあと帝から下されたのは、今後100年呪披の儀の出席を禁ずるという草刈家への処罰のみだった。


貴一の言うとおり、草刈家当主に向けた負の呪術は、帝を守るための正の呪術であったと見なされ、黒百合家は一切処分を与えられなかった。


その後、草刈家当主は皇居から追放され、貴一たちは何食わぬ顔で呪披の儀の場に残った。


「まさか、負の呪術を使ってお咎めなしとは…」

「たしかに、あのまま草刈家当主を野放しにしておいたら、帝に危害が加わっていたかもしれないが…」