呪術を悪用した呪術師に朝廷を乗っ取られないようにするため、『負の呪術禁止令』が下されているのだ。


「たしかに…負の呪術なんて、こんな場で使って大丈夫なのか?」

「まあ、ここで黒百合家がいなくなってくれれば…こちらとしてもありがたいのだが」


ヒソヒソと話す呪術師たち。

貴一はそんな呪術師たちには目もくれず、フッと小さく笑う。


「心配ご無用。それよりも、ご自分の身の心配をしたらどうだ?草刈家当主よ」

「…なんだと?オレが?…オレは負の呪術なんて使ってないぞ」

「そうだな。兵たちを弾き飛ばした呪術は、思いのままに物を動かすことができる正の呪術。しかし、お主はその使い方を間違った」


尚もピンときていない草刈家当主に、貴一はさっきの出来事の説明をする。


草刈家当主が先程発動した呪術は、熟練度によってはどんな重たいものでも自由自在に動かすことができる便利な正の呪術。